スウェーデンのパンの積み重ね

ユール(冬至)、つまりクリスマスの食卓に欠かせなかった、パンの積み重ね。
黒パン、ライ麦パンなど重ねた上に、
太陽の光を象徴するサフランをたっぷり入れた小麦パン「ルッセ・ブラ」を載せる。
『小原流 挿花』に2015年連載の「こころがつなぐ 世界のお菓子」の撮影のために
つくっていただいた。(製作:佐々木千恵美さん)

「ルッセ・ブラ」の「ルッセ」は「光」を表す「ルクス」を語源に持ち、
1年で一番昼の短い冬至につくるパンで、サフランで黄色く色づいた白パン(小麦粉)を
特別なかたち(太陽、猫、ヨハネの腕、司教のひげなど)につくる。
それらのかたちは、キリスト教以前の土着の信仰を思わせる。
掲載用の写真撮影では、一番上に「ヨハネの腕」とよばれる、この頃日本でも見かける
「ルッセ・カット」を、十字にクロスさせたサフランパンを載せた。
バイキング時代から親しまれている図案のひとつといわれている。

「ルッセ・カット」の「カット」は猫。冬至に冬の象徴として猫を撲殺した習慣をひきつぐ。
冬を完全に退治することで、太陽の完全なる再生を願った。新年を迎える祝いのパンともいえる。
北欧独特の黒パンについては、佐々木千恵美さんのレポート「オーランドの黒パン」に詳しい。

しかし、このパンの積み重ねも、残念なことに、今では民俗博物館の展示などで
見られるくらいになっているそうだ。
そして、今はりんごというより、断然みかんを飾る。太陽の色。
サフラン同様、北欧では育たない果実だからこそ、特別の日になくてはならないものに!

パンの積み重ねは、家庭によりさまざまで、白パンがない場合もあり、
かたや裕福な家庭では、ほとんどが白パンで、美しい編み込みパンを重ねたりとさまざま。
横浜山手西洋館「世界のクリスマス2013」にて 神田隆さん監修

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