八朔に藤の花

八朔の行事は、七夕やお盆に吸収されてしまったものもあり、
わかりにくくなってしまったが、断片的には、まだまだ多の事例がある。
菓子でいえば、八朔に「藤の花」という菓子を贈ったという。
「藤の花」は絵櫃に入れられた。櫃に描かれた絵も藤の花だ。
京都では、それが乳母から子どもの家へ贈られたという記録が残る。(『日次紀事』)
この「藤の花」は、縒ったしんこ餅に小豆が添えられたもの。
藤は「無事」を意味する。
小豆を載せないものは「白糸餅」とも「しんこ」とも呼ぶ。江戸では「寄り水」とも。

八朔は、祓いとともに、ひとや作物の無事の成長を祈願する日で、贈答がつきもの。
宮中や武家では、馬や刀が贈られた。

東京都あきる野市にある二宮神社の八朔の「生姜祭り」の神饌は「牛の舌餅」だ。
生姜祭りで有名なのは、東京芝神明の「だらだら祭り」。
この祭りでは、絵櫃に「大々(代々)餅」が入れられ、売られた。
その絵櫃が下の川崎巨泉が描いた絵図だ。今の千木筥には餅は入っていない。
大きな画像は大阪府立中之島図書館の人魚洞文庫で。

「牛の舌餅」も「大々餅」も餅を長く伸したかたちだったであろうと思われる。
「餅を伸ばす」を、「命を延ばす」にかけたのか?
『守貞謾稿』にも「大々餅」の絵櫃が描かれている。
その柄はやはり藤の花だ。
とすると、「だらだら祭り」は、もとは八朔の行事だったかも。

藤の花は、同じく子どもの無事の成長を祈る雛祭りの雛の着ものの柄など、いろいろに見られる。

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