『福を招く お守り菓子』
「いとおかし*『福を招く お守り菓子』」2012.1 より転載 © le studio massako mizoguti
「いとおかし」がきっかけで、本ができました。
虎屋文庫で菓子の研究に携わる中山圭子さんとの共著です。
「いとおかし」は信仰や風土に根差した菓子に心を寄せています。
名もなき人々がつくり継いだ菓子は、命をつなぐ穀物(米など)でつくられ、稲作行事とも密接です。そして、米の霊力によって福を招いたり、厄を祓ったりするはたらきを担ってきました。
私たち日本人は菓子のおいしさや装いを大切にし、洗練された菓子に憧れます。その気持ちが菓子文化を大きく前進させてきましたが、反面ちょっと忘れられている菓子文化もあることや、その菓子のつくり手にも心を留めてみたいと私は思ってきました。
ヨーロッパで「修道院のお菓子」というと、今もおいしい菓子の代名詞であり、
菓子製造のルーツの1つであることはよく知られています。
皆さんは、社寺の菓子に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか?
しかし現在、そのような菓子は、そのつくり手を失いつつあり、ピンチです。
つくり手の問題に加え、菓子に込められていたはずの原初の「おもい」を見失っていることも大きな要因です。私たち日本人は、実に驚くほど多種で多重な菓子文化を持っていたのですが・・・。まだ間に合うものならば、こうした菓子文化をわずかでもつないでいけたらと思います。
「いとおかし」でご紹介している菓子は、私ひとりがあちこちに出かけるのではなく、地元の菓子文化を大切にしている方々とつながることでもたらされる菓子や、その情報に支えられてきました。
サイトでは紹介していない菓子行事も、本のほうには盛り込むこともできました。この本が、皆さまの記憶の中の菓子、埋もれた「お守り菓子」を呼び起こすきっかけになったら幸いです。
『福を招くお守り菓子』溝口政子+中山圭子 講談社 2011年11月 1,500円(税別)
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