いとおかし*メキシコ「死者の日」の砂糖菓子*その2*アルフェニケの小羊


いとおかし*メキシコ「死者の日」の砂糖菓子*その2*アルフェニケの羊」
2010.11 より転載
© le studio massako mizoguti 

メキシコ死者の日の「アルフェニケの子羊」と「有平糖のれんげ」を一緒に写真におさめました。
有平糖はつくりたての透明感があるものでなく申し訳ありません。
メキシコのカトリック行事「死者の日」Dia de los Muerutos は、11月1・2日。

写真の子羊(イエスを象徴)は、シュガーペーストといってもよさそうな生地でつくられています。
この砂糖生地はAlfenique(アルフェニケ  nの上に~がつきます)と呼ばれますが、金花糖製法の砂糖骸骨もまたアルフェニケと呼ばれます。

有平糖の語源といわれるポルトガル語の「アルフェニン」「アルフェロワ」。
今もテルセイラ島には「アルフェニン」は残っているようですが、
『南蛮料理のふしぎ探検』の著者、荒尾美代さんによれば、「アルフェロワ」はすでに姿を消しているとのこと。

似たような名の「アルファフォール」という菓子がスペインにありました。
辞書を見ると「アンダルシア地方のクリスマスの菓子」という記述も。
バルセロナを首都とする自治州カタルーニャでは見たことがなかったのですが、
ある日、包み紙にAlfajorと書かれたサンチャゴ・デ・コンポステラ土産の菓子をいただきました。アーモンドと砂糖だけのトゥロンよりずっと柔らかでハルヴァ(ヘルワ)に近い感じ。

これらのお菓子が気になるのは、名前に共通の「アル・al」という発音です。
al はアラビア語の定冠詞です。身近なところでいえば、すでに日本語となっているアルコール、アルカリなどと同じく、「アルヘイトウ」もアラブ起源の言葉なのです。
菓子の名称の頭の「アル」がその出自を語っています。

砂糖を早くから精製し、金花糖のような高度な技術も11世紀には存在したらしいアラビアの製糖、加工技術は、イスラム帝国の領土であったイベリア半島にも根付いたようです。
長いレコンキスタ(再征服・国土回復)の時代を経て、カトリック国として今度は自ら征服者となったスペインとポルトガルは、あらゆるイスラム文化を吸収していました。
そのようにして、大航海時代を通じ、イスラムの製糖、製菓技術が各国に伝わることになりました。

スペインでは、クリスマスに欠かせないトゥロンがアラビア由来のお菓子だとされますが、カステラのルーツ「ビスコチョ」でさえ、砂糖を多用することから、アラブ由来と考える方もいるようです。



京都の亀廣保さんに伺った時のこと。奥から有平のれんげを鋏でパチパチとリズミカルに切る音が聞こえてきて、手元の作業が目に浮かびました。
透明感のある有平糖のれんげ散華にのせて。
参考:『南蛮スペイン・ポルトガル料理のふしぎ探検』荒尾美代 1992 日本テレビ放送網株式会社
『砂糖のイスラーム生活史』佐藤次高 2008 岩波書店

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